ブックオフと生前戒名の意外な共通点
古い体質の世界に登場したブックオフ
父の一周忌で横浜に戻っている合い間に、かつての同僚と食事をしました。
私が沖縄に住んでいるため、会う時はいつも数年ぶり、十年以上ぶりのこともあります。
かつての職場。それは日本最大の中古ショップチェーン、ブックオフコーポレーションです。
とはいっても、私が入社したときはまだ創業期でした。店舗も本社のある相模原市と隣接した町田市に小さなお店が数か所という程度。
社員も数名でしたので、数年間は創業社長と近いところで仕事をしていました。
しょっちゅう怒られながらも鍛えてもらったことに、今では感謝です。
その創業社長がこのようなことを言っていました。
「旧態依然とした古い体質の業界(世界)にはチャンスがある」。
こういうことです。
世の中の変化、時流にあらがい、百年一日のごとく同じことを同じやり方で続けていると、いつしか消費者のニーズと大きな隔たりが生じます。
その隔たりを埋めることをすれば、おのずと賛同する消費者が現れる、ということです。
古本屋そのものは江戸時代から存在していました。
ただ、それまでの古本屋は狭く、暗く、奥には店主のおじさんがムスッとして座っているというイメージでした。
棚に並んでいる本は汚れていたり、シミがあったり、埃っぽかったり。
お店に入ると古本独特の臭いが鼻に突いてくる。
本の内容も専門的なものが多く、学生や学者がおもな客層でした。
およそ、子どもや若い女性が気軽に立ち寄れる店とは程遠いのが、従来の古本屋でした。
お客様を遠ざけていたさまざまな要因を一つひとつ解消して、新しいパッケージにしたのがブックオフというお店です。
今までなかったものをつくったというよりは、従来からあった旧式のものをやり方を一新して始めた、というのが正しいでしょう。
生前戒名も古い体質だからこそ
何を言いたいのか、もうおわかりかもしれません。
戒名の世界。誰もが認める「旧態依然とした古い体質」の世界です。
戒名制度そのものを批判しているのではなく、おおよそ納得がいかない高額な料金です。
何十万円、ときに百万円を越えるというのに、その根拠についての説明は一切なく、したがって見積りも明細書もありません。
よくもまあ、こんな腑に落ちない慣習が延々と続くものだ、とあきれるほどです。
私がエピローグ令和の起業を考えたとき、「こんな業態が成り立つのだろうか」という懸念は当然ありました。
それでも、ブックオフが世の中に受け入れられた必然性は必ず戒名の世界にも当てはまるはず、と信じてスタートしました。
これは、たまたまの偶然なのか。そうではなく、どこかで繋がっていたのか。
四半世紀を経て、自分がやるべきことに戻ってきた・・・のかもしれません。